駒場の東京大学大学院数理科学研究科にて,2013年10月23日から26日にかけてTUG2013(https://tug.org/tug2013/jp/)が開催されました。34回目となるTeXの国際大会ですが,日本で開催されるのは今回がはじめてとのことです。弊社も大会の協賛に加わり,また業務の合間をぬって参加しプログラムを聴講しました。すべてのプログラムには参加できませんでしたが,チュートリアルを中心にかんたんなレポートを書いてみます。
今回のチュートリアルの特色は,日本語の文字について焦点をあてた内容でした。たとえば,どのように日本語が書かれたり,組まれたり,またはコンピューターで用いられているのか。わたしたちにとっては,習慣として見なれている自明な文字表記や文字組が,ではどのような成りたちがあり,またどのようなロジックになっているのかということを問われれば,なかなか答えられないとおもいます。ましてや日本語を母語としない人にたいして,それらをどのように説明することができるでしょうか。
チュートリアルの具体的なテーマはそれぞれ日本語表記の歴史,書体デザイン,組版といったトピックスをあつかっています。それらをとおして日本語の特色がうかびあがるような内容になっていたとおもいました。
最初のチュートリアルはYADA Tsutomu, ``An Introduction to the Structure of the Japanese Writing System''。矢田先生は『国語文字・表記史の研究』(汲古書院)という本を書かれていますので,どのように日本語表記の話をすすめていくのかとても関心がありました。
まずは,漢字からひらがなやカタカナがそれぞれできてゆく過程と,漢字仮名交じり文へといたるながれを追っていました。例として「これはぼくがかっているいぬです。」という文をあげて,この文が漢字やかなをもちいていくとおりにでも表記できることをしめしていました。そして漢字に焦点をあてて,書体,読み(音読み,訓読み),送りがな,ふりがななど,漢字にまつわるさまざまな項目をあげていました。
さいごに約物や,Punctuationをとりあげていました。濁点・半濁点がいつから使われているか,句読点や長音符の歴史や用例など,知らないことばかりでとても楽しめました。いわれてみるとカギかっこなど日本独自の約物もけっこうあるものだと気づきました。
スライドの資料も昔の写本からマンガのひとコマをもちいたものなど,さまざまなものがつかわれていて,かなり専門的な内容になっていました。
つづいてのチュートリアルはSHIKANO Keiichiro, ``Indexing Makes Your Book Perfect''。オーム社の『マンガでわかる統計学』が世界各国で翻訳されていて,それぞれどのように索引がつけられているかというお話からはじまりました。日本語と英語以外の書籍はなかなかふれることがなく,ましてやロシア,韓国,タイなどの索引をみる機会はなかなかないので貴重な機会でした。
そして日本語での索引のつけ方やLaTeXによる索引のつけ方を説明していました。ここでも漢字と読みの問題点〔同じ漢字のならびなのに読みがことなる場合(例:相性と多相性)〕にふれていました。
なにより,そもそも索引とは何か?だれのために必要なのか?という本質的な点をあげていたのが印象にのこりました。
なお,チュートリアルの資料は以下のアドレスにまとめてあるので一読をおすすめします。
http://www.tug.org/tug2013/program.html#tutorials
そのほかに,この日は「Online publishing via pdf2htmlEX」というプログラムが話題になっていました。pdf2htmlEXというのはPDFをHTMLに変換するツールです。サンプル(http://coolwanglu.github.io/pdf2htmlEX/demo/geneve.html)をみてびっくりしました。
ふなき
2013年11月27日
TUG2013レポート(10/23)
posted by ウルス at 20:41| Comment(1)
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